おいおい、何でもありだな!その29㎡・1LDKで20年間戦えますか?

最近、富山では、こんな新築賃貸物件がバンバン建っています。

専有面積29㎡・1LDK・賃料7万8,000円(共益費込み)

おいおい、何でもありだな!

祐天寺や中目黒辺りなら戦えると思うけど、富山で戦えるか?

率直に言えば、私はそう感じます。

もちろん、表示上は1LDKです。

そんなことは分かっています。

私が言いたいのは、

「29㎡を1LDKと表記してよいのか」という話ではありません。

富山では、一般的な1LDKの面積は40㎡前後です。

その中で、約11㎡も狭い29㎡の1LDKを、家賃7万8,000円で募集する。

いくら新築で、場所がよく、設備が充実していたとしても、本当にその家賃で決まるのでしょうか。

さらに大切なのは、

その間取りと家賃で、20年間戦い続けられるのか

ということです。

目次

「1LDK」という名前だけでは入居者をだませない

29㎡でも、間取りのつくり方によっては1LDKと表記できます。

しかし、入居者が借りるのは「1LDKという名称」ではありません。

実際の部屋です。

LDKと寝室を分けた結果、寝室が3帖程度しかない。

ベッドを置けば、ほとんど余裕がない。

収納も限られる。

LDKにも、大きなソファやダイニングテーブルを自由に置けるほどの余裕はない。

図面上は1LDKでも、入居者が内見したときに、

「思っていた1LDKと違う」

「これなら広めのワンルームや1Kでいい」

と感じれば、選ばれません。

特に富山では、40㎡前後の1LDKが珍しくありません。

同じ1LDKという検索結果の中で、29㎡の物件と40㎡前後の物件が比較されるのです。

新築のうちは、設備や見た目で勝てるかもしれません。

では、築10年になったらどうでしょうか。

築20年になったとき、何を武器に戦うのでしょうか。

家賃6万円でなければ、建築受注が取れない

昔、こんなことがありました。

建築担当者から、

「家賃を6万円で設定してほしい」

と言われました。

私は答えました。

「このエリアの相場は5万円なので、6万円では無理です」

すると、担当者はこう言いました。

「6万円で設定しないと、オーナーが希望する利回りにならないので、建築の受注が取れません」

私は聞き返しました。

「受注が取れても、完成した後に満室にならなかったら、誰がどう責任を取るの?」

建築費が先に決まっている。

オーナーが希望する利回りも決まっている。

その数字に合わせるために、想定家賃を引き上げる。

これでは、家賃査定ではありません。

単なる数字合わせです。

建築受注のために作られた家賃

結局、その物件は、私の知らないところで家賃6万円に設定されました。

しかし、募集を始めても入居が決まりません。

しびれを切らしたオーナーが店舗に来て、店長に言いました。

「なんで決まらないんだ!」

店長は答えました。

「この辺りの相場は5万円なので、この家賃では厳しいです……」

すると、オーナーは激怒しました。

「ふざけるな!お前の会社の社員が、この家賃で決まると言ったから建てたんだ。何とかしろ!」

オーナーからすれば、当然です。

同じ会社の建築担当者から、

「6万円で決まります」

と説明され、その家賃を前提にした収支計画を信じて建築したのです。

それなのに、建物が完成してから仲介店舗に、

「相場は5万円です」

と言われても、納得できるはずがありません。

建築担当者は受注できれば売上になります。その後の責任は取りません。会社を辞めれば知ったこっちゃありません。

しかし、完成後にその家賃で入居者を決めるのは、現場のリーシングスタッフです。

建築受注のために作られた家賃のツケを、オーナーと仲介店舗が背負うことになるのです。

募集家賃と成約家賃は別物

ここは、非常に重要です。

ポータルサイトを見れば、周辺物件の募集家賃は簡単に調べられます。

しかし、ポータルサイトに掲載されているのは、貸主が希望する募集家賃です。

その金額で実際に契約されたとは限りません。

家賃7万8,000円で掲載されているからといって、その地域の成約相場が7万8,000円とは限らないのです。

何カ月も決まらず、最終的に家賃を下げたかもしれません。

フリーレントを付けたかもしれません。

礼金をゼロにしたかもしれません。

仲介会社へ高額なADを支払って、ようやく決まった可能性もあります。

例えば、家賃7万8,000円で募集し、フリーレントを2カ月付けたとします。

年間の家賃収入は、

7万8,000円×10カ月=78万円

です。

これを12カ月で割ると、実質的な月額収入は6万5,000円になります。

さらにADや募集経費を支払えば、実質収入はもっと下がります。

表面上は家賃7万8,000円でも、実際の収益力は7万8,000円ではありません。

だから、見るべきなのは募集家賃ではなく、

  • 実際にいくらで成約したのか
  • 募集から成約まで何日かかったのか
  • フリーレントを何カ月付けたのか
  • ADをいくら支払ったのか
  • 契約時にどのような条件変更をしたのか

という事実です。

一番詳しいのは現場のリーシングスタッフ

家賃相場の肌感覚を最も理解しているのは、現場のリーシングスタッフです。

建築業者ではありません。

カリスマ大家でもありません。

有名な不動産コンサルタントでもありません。

もちろん、そうした人たちの知識や経験が参考になる場合はあります。

しかし、富山の入居希望者が今、どの物件を比較し、どの家賃を高いと感じ、何を理由に申込みを見送っているのか。

その生の情報を持っているのは、毎日お客様を案内しているリーシングスタッフです。

特に、その店舗で一番多く契約を取っているスタッフに聞くのが一番です。

例えば、金髪で、派手なネイルをして、派手な服装をしている。

言葉遣いも少し気になる。パッと見、パッパラパー。

あくまでイメージです(笑)

外見だけを見れば、頼りなく感じるオーナーもいるかもしれません。

しかし、そのスタッフが年間200件以上の仲介契約を取っているケースは多々あります。

想であれば、私はその人の意見を重視します。

そのスタッフは、年間200回以上、入居者が物件を決める瞬間を見ているからです。

「この部屋は狭い」

「この家賃なら、別の物件がいい」

「新築でも、この広さでは高い」

「もう少し古くても、広い部屋がいい」

こうした入居者の本音を、現場で直接聞いています。

社長や建築担当者の肩書きよりも、その実績と経験のほうが信用できます。

だって、現場を知っているからです。

家賃を高くすれば、利回りも高くなる

表面利回りは、年間の想定家賃収入を物件価格で割って算出します。

そのため、想定家賃を高く設定すれば、計算上の利回りはいくらでも高くできます。

しかし、その家賃で入居が決まる保証はありません。

決まらない家賃を収支計画に入れても、それは収益ではありません。

希望です。

願望です。

建築を受注するために高く設定された家賃であれば、なおさらです。

表面利回りは、あくまでも一定の家賃で入居が継続することを前提にした数字です。

その前提が崩れれば、利回りも崩れます。

新築だから決まっただけではないか

29㎡・家賃7万8,000円の1LDKでも、新築時は決まる可能性があります。
(それでも、最近は新築でも半年以上、満室にならないケースも多いです)

新築には、

  • 誰も使用していない
  • 内装も設備も新しい
  • インターネット無料などの人気設備がある
  • 外観がきれい
  • セキュリティが充実している

という強い商品力があります。

しかし、「新築」は最初の一度しか使えません。

数年後には、近くにもっと新しい物件が建ちます。

そのとき、自分の物件は新築ではありません。

設備は交換できます。

壁紙も床も張り替えられます。

外壁も塗装できます。

しかし、29㎡という専有面積は、簡単には変えられません。

築年数が経過した29㎡の1LDKと、40㎡前後ある競合の1LDK。

同じような家賃なら、入居者はどちらを選ぶでしょうか。

新築時に決まったからといって、その家賃に長期的な市場性があるとは限りません。

新築の力で決まった家賃と、物件本来の力で決まる家賃を混同してはいけないのです。

20年後も同じ家賃で決まりますか

賃貸経営は、建てて終わりではありません。

完成した瞬間がスタートです。

10年、20年、場合によっては30年以上、その物件で入居者を集め続けなければなりません。

20年後も、新築時と同じ家賃で客付けできる保証はありません。

家賃が下がる可能性がある。

空室期間が長くなる可能性がある。

ADやフリーレントが増える可能性がある。

設備交換や大規模修繕も必要になります。

そのような状況になっても、返済を続けられる収支計画になっているでしょうか。

新築時の家賃7万8,000円だけではなく、

  • 7万円まで下がった場合
  • 6万5,000円まで下がった場合
  • 入居率が90%になった場合
  • 入居率が80%になった場合
  • ADが2カ月必要になった場合
  • 修繕費が増えた場合
  • 金利が上昇した場合

まで想定すべきです。

この条件でも経営を続けられるのであれば、初めて長期的な事業計画と呼べます。

その29㎡・1LDKで20年間戦えますか

29㎡の1LDKそのものを、すべて否定するつもりはありません。

単身者が寝室と生活空間を分けたいという需要はあります。

立地、設備、デザイン、家賃のバランスが取れていれば、選ばれる可能性もあります。

しかし、富山では40㎡前後の1LDKが一般的です。

その市場で、29㎡の1LDKを供給するのであれば、

「1LDKと表記できる」

というだけでは不十分です。

なぜ29㎡でも選ばれるのか。

40㎡前後の1LDKと比較されたとき、何で勝つのか。

新築ではなくなった後、どの家賃なら成約できるのか。

そこまで考えなければなりません。

建築会社が示した募集家賃ではなく、現場で実際に決まった成約家賃を確認する。

一番多く契約を取っているリーシングスタッフに意見を聞く。

そして、新築時だけでなく、10年後、20年後の収支まで計算する。

建築を決める前に、もう一度問いかけてください。

その間取りで、20年間戦えますか?

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次