全国の平均家賃をご存じでしょうか。
賃貸住宅の家賃に関する資料は、インターネット上にもたくさんあります。
しかし、データによって集計対象や計算方法が異なるため、どの資料を見ればよいのか分からない方も多いと思います。
掲載されている募集物件を集計したデータなのか。
実際に契約された物件のデータなのか。
新築と築古を一緒に集計しているのか。
ワンルームからファミリー物件までを、どのように分類しているのか。
こうした条件が違えば、同じ地域でも平均家賃は大きく変わります。
そのため、「全国の平均家賃」という数字だけを見て、単純に地域を比較することはできません。
私が見ている「都道府県別賃料動向」
私が参考にしているのは、全国賃貸管理ビジネス協会が定期的に発行している『賃貸ビジネスジャーナル』の最終ページに掲載されている「都道府県別 賃料動向」です。
一般の方が目にする機会は、ほとんどない冊子だと思います。
今回確認したのは、2026年4月の家賃データベースです。
この資料は、全管協少額短期保険株式会社の少額短期保険契約実績を基に作成されています。
インターネット上に掲載されている募集家賃ではなく、実際に契約された賃料を集計している点が特徴です。

同資料には、
- 総平均賃料は1~3部屋すべてのデータから算出
- 1部屋には1K、1DK、1LDKなどを含む
- 募集単価ではなく契約単価で集計
と記載されています。
募集時に設定した希望家賃ではなく、実際の契約に基づくデータなので、賃貸市場の実態を把握するうえで参考になる資料だと私は考えています。
約154万件の保有契約を持つ保険会社のデータ
全国賃貸管理ビジネス協会の案内によると、全管協少額短期保険を含む家財保険の保有契約件数は約154万件とされています。
また、同協会は全国約2,000社、約3,500店舗のネットワークを公表しています。
地方では、全管協少額短期保険の代理店となっている賃貸管理会社も多くあります。
すべての賃貸借契約を網羅した統計ではありませんが、相当数の実際の保険契約を基にしているため、特に地方の賃料相場を見るうえでは有力な参考資料の一つです。
ただし、このデータにも注意点はあります。
全管協少額短期保険の契約者だけを対象としたデータであり、すべての管理会社、すべての物件、すべての賃貸借契約が含まれているわけではありません。
また、都道府県単位の平均なので、同じ県内でも市町村、立地、築年数、広さなどによる違いまでは分かりません。
このデータだけで個別物件の適正家賃を決めることはできませんが、地域全体の傾向を知る資料としては非常に興味深いものです。
2026年4月の全国平均家賃
2026年4月の「都道府県別 賃料動向」によると、全国の平均賃料は次のとおりです。
| 間取り区分 | 全国平均賃料 |
|---|---|
| 1部屋 | 53,550円 |
| 2部屋 | 60,088円 |
| 3部屋 | 67,952円 |
| 総平均賃料 | 57,456円 |
東京都の総平均賃料は79,417円で、全国平均は東京都の約72%という結果です。
ただし、首都圏のデータについては、同じ都県内でも家賃の高低差が非常に大きいため、都道府県平均だけで実態を判断するのは難しいと思います。
東京都内でも、都心部と郊外では相場が大きく異なります。
同じ「東京都の平均家賃」であっても、実際に物件を探しているエリアによって、参考になる度合いは変わります。
北陸3県で平均家賃が最も高いのは福井県
今回のデータから、富山県、石川県、福井県を比較してみます。
| 地域 | 1部屋 | 2部屋 | 3部屋 | 総平均賃料 |
|---|---|---|---|---|
| 富山県 | 44,794円 | 51,545円 | 57,674円 | 47,631円 |
| 石川県 | 47,248円 | 51,308円 | 75,160円 | 51,454円 |
| 福井県 | 47,509円 | 56,961円 | 64,833円 | 52,650円 |
北陸3県の中で総平均賃料が最も高いのは、福井県の52,650円です。
次が石川県の51,454円、富山県は47,631円となっています。
「北陸で最も人口の多い都市は金沢だから、石川県の平均家賃が一番高いだろう」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、今回の総平均賃料では福井県が最も高くなっています。
家賃は、都市の知名度や人口規模だけで単純に決まるものではないことが分かります。
2部屋では富山県と石川県がほぼ同じ
間取り区分ごとに見ると、さらに興味深いことが分かります。
2部屋の平均賃料は、
- 富山県:51,545円
- 石川県:51,308円
です。
その差はわずか237円で、今回のデータでは富山県のほうがわずかに高くなっています。
ほぼ同じ水準と考えてよいでしょう。
一方、1部屋では石川県が富山県より2,454円高く、3部屋では石川県が富山県より17,486円高くなっています。
つまり、「富山県と石川県では、どの間取りでも同じ」ということではありません。
間取りによって結果が違うのです。
地域の平均家賃を比較するときには、総平均だけでなく、間取りごとの違いまで確認する必要があります。
「富山のくせに、なぜこんなに家賃が高いんだ」
以前、金沢から富山へ来られたお客様から、
「富山のくせに、どうしてこんなに家賃が高いんだ」
と文句を言われたことがあります。
何とも理不尽な話です。
私はその方に、
「平均家賃は、間取りによっては富山も石川もそれほど変わりませんよ」
と説明しました。
しかし、その方は私の話を信じず、鼻で笑うような態度で帰っていきました。
おそらく、
「金沢は都会だから家賃が高い」
「富山は田舎だから家賃が安い」
という先入観があったのでしょう。
今回のデータを見ると、少なくとも2部屋の平均賃料については、富山県と石川県はほぼ同じです。
富山県が51,545円、石川県が51,308円ですから、実際には237円だけ富山県のほうが高くなっています。
感覚や都市のイメージと、実際の契約データは必ずしも一致しません。
金沢には家賃の安い築古物件もある
私が金沢周辺の賃貸物件を見ていると、中心部などに築年数の古い物件や、バス・トイレ・洗面が一体になった3点ユニット、20㎡未満の比較的小さな物件を見かけることがあります。
そのような条件の物件では、非常に低い家賃で募集されているケースもあります。
家賃1万円台後半や、条件によっては1万円前後で募集されている物件を見ることもあります。
しかし、それをもって「金沢の家賃は安い」と結論づけることはできません。
反対に、金沢駅周辺の築浅物件や、広いファミリー物件、高性能な設備を備えた物件であれば、家賃は高くなります。
これは富山でも同じです。
富山市内にも家賃の安い築古物件がある一方で、立地が良く、設備の充実した築浅物件は高い家賃で契約されています。
都市名だけで家賃を比較しても、正しい相場は見えてきません。
家賃は「都会か田舎か」だけで決まらない
家賃は、大都市だから高く、地方だから安いという単純なものではありません。
基本的には、その地域、その時点における需要と供給のバランスによって決まります。
具体的には、次のような条件が賃料へ影響します。
- 物件の所在地
- 最寄り駅や主要道路へのアクセス
- 周辺の勤務先や学校
- 世帯数や転入・転出の状況
- 同じ間取りの競合物件数
- 築年数
- 専有面積
- 間取り
- 駐車場の有無
- インターネット無料などの設備
- バス・トイレ別かどうか
- 内装や水回りの状態
- ペット飼育などの募集条件
- 募集する時期
供給が少なく、借りたい人が多い条件であれば、地方でも家賃は上がります。
反対に、物件の供給が多く、入居希望者が少なければ、大都市であっても家賃を下げなければ決まらない物件が出てきます。
家賃を決めるのは、都市のイメージではなく、物件ごとの競争力と需要です。
「平均家賃」は個別物件の適正家賃ではない
今回紹介したデータは非常に参考になりますが、平均家賃をそのまま所有物件の募集家賃に当てはめてはいけません。
例えば、富山県の2部屋の平均賃料が51,545円だからといって、富山県内にあるすべての2部屋を51,545円で募集できるわけではありません。
富山市中心部と県内郊外では需要が異なります。
築3年と築30年でも違います。
同じ築年数でも、駐車場、インターネット、エアコン、宅配ボックス、洗面台などの条件によって成約家賃は変わります。
また、この資料の1部屋には、1Kだけでなく1DKや1LDKなども含まれています。
専有面積や間取りタイプの違う物件をまとめて集計した平均値であることにも注意が必要です。
平均家賃は、あくまで都道府県全体の傾向を見るための指標です。
個別物件の家賃査定では、次の情報も確認する必要があります。
- 周辺の募集中物件
- 直近の成約事例
- 同じ築年数や間取りの競合
- 問い合わせ件数
- 内見件数
- 空室期間
- 成約しなかった理由
- 現在の入居者ニーズ
平均値と現場の情報を組み合わせて、初めて現実的な家賃を判断できます。
オーナーが平均家賃データを見る意味
オーナーが都道府県別の平均家賃を知る意味は、「自分の物件の家賃を平均に合わせること」ではありません。
市場を大きな視点から見るためです。
例えば、次のような確認に使えます。
- 自分の地域は全国と比べてどの程度の水準か
- 近隣県との間にどの程度の差があるか
- 間取りによって地域差が変わるか
- 前年同月から賃料が上がっているか、下がっているか
- 自分の感覚と実際の契約データにズレがないか
2026年4月のデータでは、富山県の総平均賃料は前年同月比で横ばいです。
石川県は3%上昇、福井県は横ばいとなっています。
こうした変化を継続的に見ていけば、それぞれの地域で賃料がどの方向へ動いているのかを考える材料になります。
ただし、単月の数字だけで長期的な上昇・下降傾向を断定することはできません。
複数月、複数年のデータを確認することが重要です。
まとめ
家賃は、「都会だから高い」「地方だから安い」という単純な基準では決まりません。
今回確認した2026年4月のデータでは、北陸3県の総平均賃料は次のとおりです。
- 福井県:52,650円
- 石川県:51,454円
- 富山県:47,631円
総平均賃料が最も高いのは福井県です。
さらに2部屋では、富山県が51,545円、石川県が51,308円で、ほぼ同じ水準となっています。
「金沢のほうが都会だから、石川県の家賃は富山県より必ず高い」
という思い込みは、少なくとも今回の2部屋のデータには当てはまりません。
家賃を左右するのは、都市のイメージではなく、エリア、需要、供給、間取り、築年数、設備、募集時期などです。
平均家賃は、個別物件の家賃を決定する数字ではありません。
しかし、自分の思い込みと実際の市場にズレがないかを確認するうえでは、有効な材料になります。
感覚だけで家賃を決めるのではなく、実際の契約データと、現場の募集状況の両方を確認してください。
賃貸経営は、イメージではなく、数字と現場を見て判断することが大切です。

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