賃貸オーナー様から、
「現在の管理会社に不満はあるが、変更してよいのか分からない」
「空室が続いているのに、具体的な提案がない」
「管理会社を変更すると、入居者に迷惑がかからないか心配」
という相談を受けることがあります。
管理会社に多少の不満があっても、すぐに変更する必要があるとは限りません。
担当者との話し合いや業務内容の確認によって、改善できる場合もあります。
一方で、問題を放置した結果、空室が長期化したり、修繕費が増えたり、入居者との関係が悪化したりする可能性もあります。
私は、管理会社は単なる「建物の管理業者」ではなく、オーナー様と一緒に賃貸経営を行う「共同経営者」であるべきだと考えています。
この記事では、約30年間の賃貸管理の現場経験に基づく判断軸として、管理会社の変更や見直しを検討すべき7つのサインと、変更前に確認したい注意点を解説します。
管理会社の役割は家賃の集金だけではない
賃貸住宅管理業法では、賃貸住宅管理業者に対して、管理受託契約締結前の重要事項説明、契約書面の交付、家賃などの分別管理、オーナーへの定期報告などが定められています。
国土交通省によると、対象となる賃貸住宅管理業者は、管理業務の実施状況などについて、少なくとも年1回以上、オーナーへ報告する必要があります。
ただし、管理戸数200戸未満の事業者は登録が任意であり、法律施行前から継続している契約の一部には、定期報告義務の適用に例外があります。
そのため、現在の管理会社にどの規定が適用されるかは、登録状況や契約締結時期を含めて個別に確認する必要があります。
法律上の最低限の業務を行うだけで、オーナー様の賃貸経営が良くなるわけではありません。
重要なのは、その物件の収益や将来を考えた提案が行われているかどうかです。
サイン1.管理状況について報告がない
毎月家賃が入金されているだけで、物件の状況が分からない場合は注意が必要です。
管理会社から、次のような情報が報告されているでしょうか。
- 入居状況
- 家賃の入金状況
- 滞納の有無
- 入居者からの相談や苦情
- 修繕の実施状況
- 共用部や敷地内の状態
- 空室の問い合わせ件数
- 内見件数と反応
- 今後必要になりそうな修繕
- 周辺の賃貸市場や競合物件の変化
報告がなければ、オーナー様は正しい判断ができません。
特に遠方に住んでいるオーナー様は、自分で物件を確認する機会が少ないため、写真を含めた定期報告が重要になります。
まずは管理会社に、現在どのような報告を、どの頻度で行う契約になっているのかを確認してください。
サイン2.空室対策が家賃の値下げだけ
空室が続いたとき、
「家賃を下げましょう」
という提案しかない場合は、その根拠を確認する必要があります。
家賃が周辺相場より明らかに高ければ、条件の見直しが必要な場合もあります。
しかし、空室の原因は家賃だけではありません。
- 掲載写真が暗い、または少ない
- 募集情報が不足している
- 初期費用が競合物件より高い
- 設備が入居対象者と合っていない
- 清掃や原状回復が不十分
- 共用部の印象が悪い
- 駐車場や除雪方法の説明が不足している
- 他の仲介会社が紹介しにくい条件になっている
原因を確認せずに家賃を下げると、収入だけが減り、根本的な問題が残ることがあります。
管理会社には、問い合わせ数、内見数、内見後の反応、競合物件との比較を示したうえで、改善策を提案してもらいましょう。
サイン3.修繕の説明や見積内容が分からない
賃貸経営では、修繕を避けることはできません。
問題は、修繕費が発生することではなく、オーナー様が内容を理解できないまま工事が進むことです。
- どこが故障しているのか
- なぜ修繕が必要なのか
- 緊急性はどの程度か
- 修理と交換のどちらが適切か
- 見積金額に何が含まれているのか
- 他の方法はないのか
- 今回直さなかった場合にどのようなリスクがあるのか
こうした説明がなければ、適切な判断はできません。
金額の安さだけで修繕業者を選ぶことも危険ですが、「管理会社に任せているから」と内容を確認しないことにもリスクがあります。
管理会社には、状況が分かる写真、工事の必要性、見積りの内訳を示してもらいましょう。
サイン4.入居者への対応状況が分からない
入居者からの相談や苦情を、すべてオーナー様へ即時報告する必要があるとは限りません。
管理会社が日常的な問題を処理することも、管理を委託する目的の一つです。
しかし、次のような重要な問題が共有されない場合は注意が必要です。
- 長期間の家賃滞納
- 騒音や迷惑行為
- 漏水や設備の重大な故障
- 建物の安全性に関わる問題
- 近隣とのトラブル
- 退去や契約に影響する問題
- 同じ相談が繰り返し発生している状態
国土交通省は、賃貸住宅管理業者による定期報告の対象として、管理業務の実施状況に加えて、入居者からの苦情の発生状況と対応状況を挙げています。
問題を隠さず、事実と対応状況をオーナー様へ説明できることが重要です。
サイン5.担当者によって回答が変わる
同じことを聞いても、担当者によって回答が異なる場合があります。
個人の経験や記憶だけに頼り、社内で情報を共有できていない可能性があります。
- 担当者が不在だと何も分からない
- 修繕の依頼内容が共有されていない
- 過去の入居者対応を確認できない
- オーナー様との約束が記録されていない
- 担当者が変わるたびに説明が必要になる
- 退職した担当者しか経緯を知らない
賃貸管理は、長期間継続する業務です。
一人の担当者が永久に対応することはできません。
担当者個人の能力だけでなく、情報を記録し、社内で共有し、誰でも一定の対応ができる仕組みが必要です。
サイン6.オーナーの目的を理解していない
賃貸経営の目的は、オーナー様によって異なります。
- 毎月の手残りを増やしたい
- 借入金を早く返済したい
- 物件価値を維持したい
- 相続に備えたい
- 一定期間後に売却したい
- 子どもへ引き継ぎたい
- 地域に必要とされる物件として残したい
短期間で売却する予定の物件と、子どもへ引き継ぐ予定の物件では、必要な修繕や資金計画が変わります。
管理会社がオーナー様の目的を知らなければ、適切な提案はできません。
空室を埋めることだけでなく、物件を今後どう経営していくのかを一緒に考えられるかが重要です。
サイン7.将来に向けた提案がない
毎月発生した問題を処理するだけでは、物件の状態は少しずつ悪くなっていきます。
賃貸経営には、将来を見据えた計画が必要です。
- 屋根や外壁をいつ修繕するか
- 給湯器やエアコンの交換時期
- 空室が増える前に何を改善するか
- 家賃を維持するために必要な設備
- 修繕資金を毎年いくら確保するか
- 周辺物件との差別化
- 入居者に長く住んでもらうための対策
- 売却や相続を見据えた準備
提案が多ければ良いというわけではありません。
不要な工事を勧められては、オーナー様の利益を損ないます。
必要なのは、物件の現状と将来を確認し、費用、効果、優先順位を説明した提案です。
管理会社を変更する前に行う5つの確認
不満があるからといって、すぐに解約を申し入れるのはお勧めしません。
まず、次の5つを確認します。
1.不満と問題点を整理する
「対応が悪い」という表現だけでは、問題を正確に伝えられません。
- 報告がない
- 連絡が遅い
- 空室提案がない
- 修繕内容が分からない
- 入居者対応に不安がある
このように、具体的な事実に分けて整理します。
2.現在の管理会社に改善を求める
問題点を伝え、改善方法と期限を確認します。
担当者の変更や報告方法の見直しによって解決できれば、管理会社を変更する必要はありません。
口頭だけでなく、メールなど記録が残る方法で確認すると、双方の認識をそろえやすくなります。
3.管理委託契約書を確認する
管理会社を変更する場合は、現在の契約書を必ず確認してください。
特に重要なのは次の項目です。
- 契約期間
- 更新方法
- 中途解約の条件
- 解約の予告期間
- 違約金の有無
- 管理会社が行う業務の範囲
- 書類や鍵の引渡し方法
- 入居者への通知
- 敷金などの預かり金
- 家賃滞納や進行中のトラブルの扱い
解約条件は契約ごとに異なります。「管理会社はいつでも変更できる」と一律に判断することはできません。
4.新しい管理会社を比較する
管理委託料だけで判断しないことが大切です。
- 空室対策の方法
- オーナーへの報告内容
- 修繕の提案方法
- 夜間や休日の対応
- 入居者募集の仕組み
- 家賃滞納への対応
- 担当者と社内の情報共有
- 管理委託料以外に必要な費用
- 解約時の条件
契約前には、報酬だけでなく、具体的な業務内容と実施方法について説明を受け、書面で確認してください。
5.引継ぎ項目を整理する
管理会社の変更では、入居者にできるだけ混乱を与えないことが重要です。
主な引継ぎ項目は次のとおりです。
- 賃貸借契約書
- 入居者情報
- 鍵
- 敷金などの預かり金
- 家賃の入金状況
- 滞納状況
- 修繕履歴
- 進行中の工事
- 入居者からの相談やトラブル
- 保証会社や保険の情報
- 家賃振込先の変更案内
- 緊急連絡先の変更案内
旧管理会社、新管理会社、オーナー様の役割と日程を決めてから進めます。
サブリース契約の場合は特に注意する
一般的な管理委託契約と、サブリース契約は仕組みが異なります。
サブリースでは、事業者がオーナー様から建物を借り上げ、その事業者が入居者へ転貸します。
この場合、管理会社だと思っている事業者が、入居者との契約上は貸主になっていることがあります。
したがって、一般的な管理委託契約と同じ方法で変更できるとは限りません。
- マスターリース契約の期間
- 解約条件
- 解約予告期間
- 違約金
- 転貸借契約の扱い
- 入居者との契約関係
- 敷金などの預かり金
- 原状回復や修繕の負担
以上を契約書で確認してください。
内容が複雑な場合は、自己判断で解約通知を出す前に、賃貸借契約に詳しい弁護士などの専門家へ確認することをお勧めします。
管理会社の変更は目的ではない
管理会社を変更すること自体が目的になってはいけません。
目的は、賃貸経営を改善し、オーナー様の収益と資産を長期的に守ることです。
現在の管理会社と話し合って改善できるなら、それも良い選択です。
一方で、報告や提案を求めても改善されず、共同経営者として物件を任せることが難しいと判断した場合は、管理会社の見直しを検討する必要があります。
大切なのは、感情だけで決めるのではなく、
- 問題点を整理する
- 現在の管理会社へ改善を求める
- 契約内容を確認する
- 新しい管理会社を比較する
- 引継ぎ計画をつくる
という順番で進めることです。
富山賃貸経営塾では、管理会社の変更を前提にするのではなく、現在の管理状況や契約内容を整理し、オーナー様が正しく判断するための情報をお伝えします。
現在の管理会社の対応に疑問がある方や、変更すべきか判断できない方は、一人で結論を出す前にご相談ください。
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参考資料
- 国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト・管理業者の業務」
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/pm_portal/administrator_duties.html - 国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト・よくある質問」
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/pm_portal/faq.html - 国土交通省「賃貸住宅管理業法 法律、政省令、解釈・運用の考え方」
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_tk3_000001_00004.html

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