空室がなかなか決まらない。
退去が続いて、空室が増えてきた。
そんなとき、管理会社から、
「オーナー様、フリーレント1か月を付けませんか?」
と提案されたことはありませんか?
フリーレントとは、一定期間の家賃を無料にすることです。
賃貸住宅の空室対策として、よく使われる募集条件の一つです。
しかし、私は以前から少し疑問に思っていました。
「フリーレント1か月って、本当にお客様に一番響くのだろうか?」
そこで、以前、当社でちょっとしたアンケートを取ってみたことがあります。
すると、なかなか面白い結果になりました。
今回は、その結果をご紹介します。
同じ家賃6万円の物件。あなたならどれを選びますか?
例えば、家賃60,000円のアパートがあったとします。
その物件で、次の3つのキャンペーンを実施したとしましょう。
① フリーレント1か月
最初の1か月分の家賃が無料になります。
② 家賃2か月間半額
最初の2か月間、家賃が30,000円になります。
③ 家賃1年間5,000円引き
最初の12か月間、毎月の家賃が55,000円になります。
さて、皆さんならどれを選びますか?
少し考えてみてください。
ちなみに、この3つの条件をお客様に提示して、どれが一番魅力的かを尋ねてみたのです。
アンケートに協力していただいたのは、店頭に来られたお客様など約100人。
大規模な調査ではありませんが、実際にお部屋探しをされる方々の感覚を知るには、面白い試みでした。
では、結果を発表します!
約8割のお客様が選んだのは、なんと③!
一番人気だったのは……。
③ 家賃1年間5,000円引き!
なんと、8割近くのお客様が、こちらを選択されたのです。
「フリーレント1か月」ではありませんでした。
「2か月間半額」でもありませんでした。
「1年間、毎月5,000円安くなる」
こちらの方が、多くのお客様に魅力的に映ったのです。
私は、この結果を見て、
「へぇ~、そうなんだ!」
と驚きました。
しかし、ここでちょっと待ってください。
勘のいい方は、もうお気づきかもしれません(笑)。
ん?ちょっと待てよ!全部6万円じゃん!(笑)
実は、この3つのキャンペーン。
お客様が得をする金額は、まったく同じなのです。
| キャンペーン | 割引額の計算 | 合計割引額 |
|---|---|---|
| ① フリーレント1か月 | 60,000円 × 1か月 | 60,000円 |
| ② 家賃2か月間半額 | 30,000円 × 2か月 | 60,000円 |
| ③ 家賃1年間5,000円引き | 5,000円 × 12か月 | 60,000円 |
そう!どれを選んでも、割引総額は60,000円なのです!(笑)
もちろん、割引を受ける時期は異なります。
①は最初に6万円得をする。
②は2か月に分けて6万円得をする。
③は12か月に分けて6万円得をする。
そのため、入居時の資金負担を重視する方にとっては、①や②の方が魅力的な場合もあります。
しかし、アンケートでは、③を選ぶ方が圧倒的に多かったのです。
なかなか興味深い結果だと思いませんか?
全部同じ6万円だと気づいた人は、約3割!
さらに面白かったのが、こちらです。
3つのキャンペーンについて、
「あれ?これ、全部同じ金額じゃない?」
と気づいた方は、全体の約3割でした。
つまり、約7割の方は、割引総額が同じだということを、その場では指摘されなかったのです。
もちろん、これは短時間の店頭アンケートです。
じっくり比較すれば、もっと多くの方が気づいたかもしれません。
それでも、この結果を見て、私は一つのことを感じました。
「お客様の感覚と、我々不動産業者の感覚には、意外と大きな違いがあるのではないか?」
我々不動産業者は、日頃から家賃や広告料、フリーレントなどの条件を計算しています。
だから、6万円の割引と聞けば、すぐに金額で比較してしまいます。
しかし、お客様は必ずしもそうではありません。
「最初の1か月が無料になる」
という条件よりも、
「1年間、毎月5,000円安くなる」
という条件の方が、生活の中でお得感を感じやすいのかもしれません。
これは、あくまで私の推測です。
ただ、同じ金額でも、伝え方によって印象が変わるということは、十分に考えられると思います。
「毎月5,000円安い」という言葉が響く?
例えば、こんな募集広告があったとします。
A:フリーレント1か月付き!
B:今なら1年間、毎月の家賃が5,000円引き!
どちらも割引総額は同じです。
しかし、Bの方が、毎月の生活費が安くなるイメージを持ちやすいのではないでしょうか。
特に、毎月の家計を気にされる方にとっては、
「毎月5,000円安くなる」
という表現は、分かりやすいメリットです。
5,000円あれば、食費や日用品の購入にも使えます。
しかも、それが1年間続く。
そう考えると、心理的なお得感が大きくなる可能性があります。
一方、フリーレント1か月は、最初にまとまった負担を減らせるメリットがあります。
引っ越し費用がかさむ方にとっては、こちらの方が助かる場合もあるでしょう。
つまり、どちらが絶対に優れているという話ではありません。
お客様が何を重視しているかによって、魅力的に感じる条件が変わるのです。
そもそも、お客様は「フリーレント」という言葉を知っていますか?
もう一つ、私が気になっていることがあります。
それは、不動産業者が当たり前のように使っている専門用語です。
例えば、
「フリーレント1か月!」
と広告に書いてあったとします。
不動産業界の人間なら、すぐに意味が分かります。
しかし、初めてお部屋を借りる方はどうでしょうか?
「フリーレントって何?」
と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
我々は、毎日のように使っているので、つい当たり前の言葉だと思ってしまいます。
しかし、一般のお客様にとっては、なじみのない言葉かもしれません。
だったら、
「最初の1か月分の家賃が無料!」
と書いた方が、分かりやすいですよね。
わざわざ専門用語を使う必要があるのでしょうか?
不動産業界は、専門用語が多すぎる!(笑)
考えてみれば、不動産業界には専門用語がたくさんあります。
例えば、
- リーシング:入居者を募集し、賃貸借契約につなげる活動
- RC造:鉄筋コンクリート造
- 軽鉄(けいてつ):軽量鉄骨造
- 重説(じゅうせつ):重要事項説明
- AD:賃貸仲介などで使われる広告料の通称
我々は日常的に使っています。
しかし、一般のお客様が、これらの意味をすべて理解しているとは限りません。
ひどい場合には、鉄筋コンクリート造のことを、
「テッキンコン!」
なんて言う人もいます(笑)。
いやいや、そんな言葉、お客様には分からないでしょ!
不動産業者同士で話すなら構いません。
しかし、お客様に説明する際には、相手が理解できる言葉を使うべきだと思います。
専門用語を使っているだけで、商品の魅力が十分に伝わっていない可能性もあるのです。
空室対策は、割引額だけでなく「見せ方」も重要!
今回のアンケートから、私が学んだことがあります。
それは、
「同じ6万円でも、見せ方によってお客様の反応が変わる場合がある」
ということです。
例えば、家賃60,000円の物件で、6万円の募集促進予算を使うとします。
その使い方は、一つではありません。
フリーレント1か月にする。
2か月間、家賃を半額にする。
1年間、毎月5,000円を割り引く。
どれも、12か月間住んでいただいた場合の割引総額は同じです。
しかし、お客様の受け取り方は違うかもしれません。
だからこそ、管理会社には、もっと柔軟に募集条件を考えてほしいと思います。
「空室が決まらないから、フリーレント1か月!」
そればかりでは、少しもったいないのではないでしょうか。
ただし、家賃の割引方法には注意が必要!
ここで、オーナー様に注意していただきたいことがあります。
今回の③「家賃1年間5,000円引き」を実施する場合、契約条件を明確にしておく必要があります。
例えば、
通常賃料は60,000円。
契約開始から12か月間は、毎月5,000円を割り引く。
13か月目からは、通常賃料の60,000円に戻る。
こうした内容を、契約書などで明確にしておくことが重要です。
最初から家賃55,000円として契約してしまい、1年後に当然60,000円へ戻せると思っていると、トラブルになる可能性があります。
また、途中解約した場合には、実際の割引総額が3つのプランで同じにならないことにも注意が必要です。
例えば、6か月で退去した場合、③の割引額は30,000円です。
①のフリーレント1か月であれば、すでに60,000円の割引を受けています。
つまり、オーナー様にとっての費用負担や、短期退去時のリスクも違うのです。
このあたりは、管理会社とよく相談して条件を決めていただきたいと思います。
まとめ|フリーレント1か月!だけが空室対策ではない
今回は、以前当社で実施したアンケートをご紹介しました。
家賃60,000円の物件で、
① フリーレント1か月
② 家賃2か月間半額
③ 家賃1年間5,000円引き
この3つを比較したところ、約8割のお客様が③を選びました。
しかも、3つの割引総額が同じだと気づいた方は、約3割。
もちろん、約100人の店頭アンケートですから、この結果がすべての入居希望者に当てはまるとは限りません。
それでも、私は非常に興味深い結果だと思っています。
同じ金額でも、見せ方を変えるだけで、お客様の反応が変わることがある。
これは、賃貸経営に限らず、さまざまな商売に共通する話ではないでしょうか。
空室対策というと、家賃を下げる、ADを増やす、フリーレントを付ける。
そんな話になりがちです。
しかし、同じ予算でも、使い方や伝え方を変えることで、違った結果が出るかもしれません。
だからこそ、私は管理会社に、もっと知恵を絞ってほしいと思うのです。
「フリーレント1か月!」一辺倒ではなく、お客様にとって何が魅力的なのかを考えてみませんか?
ただし、物件の立地や家賃帯、入居者層によって、効果的な条件は異なります。
実施する場合は、ぜひ管理会社と相談してみてください。
最後に一言。
6万円の値引きも、見せ方次第で印象が変わる!
空室対策は、お金を使うだけではなく、頭を使うことも大切なのです!(笑)

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