AD3ヶ月出しますから決めて下さい!その金をバリューアップに使え!
当社には、毎年たくさんの賃貸オーナー様が相談に来られます。
どこかで私の噂を聞いて来社される方が多く、ほとんどが初対面です。
ちなみに、初めてお会いするオーナー様は、年間100人程度。
その中でも、圧倒的に多い相談がこれ。
「私の物件を決めてほしいんです!」
詳しく話を聞くと、
「管理は〇〇不動産さんにお願いしているのですが、なかなか決まらなくて……」
「管理会社は変えたくないので、客付けだけお願いできませんか?」
こんな話が非常に多いのです。
さて、全国の賃貸オーナーの皆さん。
ここからは、不動産業者を代表するつもりで、炎上覚悟で申し上げます。
「〇〇不動産に管理をお願いしているなら、その不動産屋に頼め!」
「人んとこの管理物件なんて、知らんがな!」
これが、不動産業者の本音です(笑)。
もちろん、実際には笑顔で、
「分かりました!頑張ります!」
「お客様がいらっしゃれば、ご紹介しますね!」
とお答えしています。
でも、心の中では……。
「いやいや、まずは管理会社に頑張ってもらってよ!」
と思っていることもあるのです(笑)。
他社管理物件の客付けを頼まれても、正直困る!
誤解しないでいただきたいのですが、他社管理物件を仲介しないという話ではありません。
実際、当社でも他社管理物件をお客様に紹介しています。
お客様の希望条件に合っていれば、当然ご紹介します。
ただし、ここが重要です。
「お客様に合う物件を紹介すること」と「オーナー様から頼まれた物件を優先して紹介すること」は別なのです。
賃貸仲介の営業マンは、お客様の希望条件に合う部屋を探しています。
家賃、立地、間取り、設備、築年数。
さまざまな条件を比較しながら、お客様に物件をご提案します。
また、お客様が「エアコンを替えてくれたら契約したい」「賃料があと3,000円下がるなら決めたい」という要望をされて、それを管理会社にお願いしても「無理っすね」の一言で片づけられることも多い。そんなやり取りがされている事も、オーナーの耳に入っていない事も多いのです。
ましてや、管理会社が別にある以上、空室対策や物件改善について、我々が自由に提案・実行できるわけでもありません。
客付けだけをお願いされても、管理会社の協力がない、肝心の物件に魅力がなければ、どうにもならないのです。
持参した物件資料、実はゴミ箱行きかも?
これも、少し言いにくい話です。
当社には、定期的に物件資料を持参されるオーナー様もいらっしゃいます。
「この物件、まだ空いているのでお願いします!」
と、紙の資料を持って来られるのです。
私は他県の不動産会社の社外取締役や、さまざまな団体の役員も務めているため、他社の経営者や社員の方と交流する機会があります。
その中で、業界の実情について話を聞くことも多いのですが……。
他社管理物件のオーナー様が持参した紙の資料が、そのまま処分されてしまうこともあるのです。
「せっかく持っていったのに、捨てるなんてひどい!」
そう思われるかもしれません。
しかし、これには理由があります。
昔と違い、現在の不動産業界では、物件情報の管理がデジタル化されています。
物件情報はパソコンや業務システムで管理し、必要な情報を検索して確認するのが一般的です。
そのため、すでにシステム上で確認できる物件について、紙の資料を改めて保管する必要がない場合もあります。
つまり、資料が処分されたからといって、必ずしも悪意があるわけではありません。
私の感覚では、ほとんどの場合、単に紙の資料が必要ないだけなのです。
ただし、物件情報の掲載状況や共有範囲は会社によって異なります。
すべての不動産会社が、すべての物件情報を把握しているわけではありません。
富山の不動産業界は、意外と仲がいい(笑)
ちなみに、富山県の不動産業界は、比較的、業者同士の交流が活発だと感じています。
「〇〇不動産と△△不動産は犬猿の仲!」
「大手不動産会社VS地元業者連合軍!」
そんなドラマのような対立構造を、私はあまり感じません(笑)。
もちろん、個別の会社間で競争や意見の違いはあるでしょう。
しかし、基本的には業者同士で物件情報を共有し、お客様を紹介し合う関係ができています。
そのため、他社管理物件のオーナー様が資料を持参されても、
「ああ、その物件ですね。資料はありますよ!」
となることも多いのです。
オーナー様からすれば、
「何度も営業に行けば、もっと紹介してもらえるのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、すでに物件情報が共有されているのであれば、資料を何度も持参することが、必ずしも客付けにつながるわけではありません。
問題は、物件情報が届いていないことではなく、情報が届いていても選ばれていないことかもしれないのです。
「ADを3ヶ月出すから決めてくれ!」というオーナー様
さて、ここからが本題です。
空室がなかなか埋まらないオーナー様から、こんな相談を受けることがあります。
「ADを3ヶ月分出すから、何とか決めてくれませんか?」
ADとは、一般的に賃貸仲介の現場で使われる広告料のことです。
例えば、家賃5万円の物件でAD3ヶ月なら、15万円。
オーナー様からすれば、
「これだけ広告料を出せば、営業マンも頑張って紹介してくれるだろう!」
と考えるのでしょう。
確かに、仲介会社にとって広告料は収入の一つです。
ADが多い物件は、営業活動上の動機になる場合もあります。
しかし、私はいつも思うのです。
「ADを3ヶ月出したところで、その部屋に住みたいと思うお客様がいなければ、決まらないでしょ!」
ここを勘違いしてはいけません。
ADというニンジンをぶら下げても、お客様は動きません!
例えば、同じ家賃5万円の物件が2つあったとします。
一方は、古いエアコン。
黄ばんだ壁紙。
使いにくい水栓。
インターホンは昔ながらのチャイム。
もう一方は、比較的新しいエアコン。
明るく清潔感のある室内。
TVモニターホン付き。
水回りも使いやすい。
立地や広さなどの条件が同程度であれば、お客様はどちらを選ぶでしょうか?
多くの場合、後者の方が魅力的に見えるでしょう。
では、前者の物件が、
「AD3ヶ月出します!」
と言ったらどうなるでしょうか。
営業マンは喜ぶかもしれません。
しかし、お客様には関係ありません。
なぜなら、ADは仲介会社に支払われるお金であって、お客様がその部屋を選ぶ理由にはならないからです。
営業マンにどれだけニンジンをぶら下げても、お客様が魅力を感じない部屋では、契約につなげるのは難しいのです。
ADを3ヶ月出すなら、そのお金でリノベーションしませんか?
私は、ADをたくさん出すとおっしゃるオーナー様には、よくこうお伝えします。
「そのお金があるなら、まずは物件力を高めましょうよ!」
例えば、家賃5万円の物件でAD3ヶ月なら15万円です。
15万円あれば、何ができるでしょうか?
物件の状態や工事内容にもよりますが、次のような改善を検討できます。
- 古くなったエアコンの交換
- TVモニターホンの設置
- キッチンや洗面台の水栓をシングルレバーに交換
- 照明器具の交換
- アクセントクロスなどによる室内の印象改善
もちろん、15万円ですべてを実施できるとは限りません。
設備の仕様や施工条件によって費用は変わります。
しかし、予算の範囲内で優先順位をつければ、入居者に選ばれるための改善ができる可能性があります。
私は、こちらの方が有効な空室対策になるケースが多いと考えています。
ADは一度きり。でも設備は次の入居者にも残る!
ここが、私が特にお伝えしたいポイントです。
ADを3ヶ月分支払って入居が決まったとします。
その広告料は、その募集で使い切る費用です。
次の入居者募集でも同じ条件でADが必要になれば、また費用が発生します。
しかし、エアコンやTVモニターホンを交換した場合はどうでしょうか。
その設備は、今回の入居者だけでなく、次の入居者にも使っていただけます。
もちろん、設備には耐用年数があり、故障や交換の費用も発生します。
それでも、設備改善は物件の魅力を一定期間高める投資になります。
ADは今回の客付けのための費用。設備改善は将来の募集にも役立つ投資。
私は、この違いをオーナー様に理解していただきたいのです。
ただし、ADがすべて無駄という話ではありません
ここは誤解しないでください。
私は、ADそのものを否定しているわけではありません。
競争が激しいエリアや、仲介会社の営業活動を後押ししたい場合など、ADが有効に働くケースもあるでしょう。
また、設備が十分に整っていても、募集条件や競合物件との関係によって、なかなか決まらないこともあります。
そのような場合には、ADを含めた募集条件の見直しも選択肢になります。
ただし、私が問題だと思うのは、
「物件が選ばれない理由を改善せず、ADだけ増やして何とかしようとすること」
なのです。
古い設備。
傷んだ内装。
家賃と見合わない物件の状態。
こうした問題があるのに、ADを増やすだけでは根本的な解決になりません。
まずは、なぜお客様に選ばれていないのかを考える。
私は、それが空室対策の出発点だと思っています。
空室が埋まらないのは、営業マンが頑張っていないから?
オーナー様から、こんなことを言われることもあります。
「管理会社の営業力が弱いんじゃないか?」
「もっと積極的に紹介してくれれば決まるはずだ!」
もちろん、仲介会社の営業力や募集活動には差があります。
物件写真が悪い。
インターネットへの掲載内容が不十分。
問い合わせへの対応が遅い。
こうした問題があれば、改善する必要があります。
しかし、募集活動に問題がなくても、物件自体に競争力がなければ決まりません。
賃貸仲介の営業マンは、魔法使いではありません(笑)。
どんな部屋でも、営業トークだけで満室にできるわけではないのです。
最終的に、その部屋に住むかどうかを決めるのは、お客様です。
だからこそ、営業マンに頑張ってもらう前に、お客様から選ばれる部屋をつくることが重要なのです。
まとめ|ADを増やす前に、まずは物件力を高めよう!
今回、少し辛口で書きました。
しかし、私が伝えたいことは非常にシンプルです。
「ADを3ヶ月出すから決めてくれ!」
その気持ちは分かります。
空室が長引けば、オーナー様も焦ります。
家賃収入が入らない期間が続くのは、賃貸経営にとって大きな負担です。
しかし、そこでADだけを増やす前に、一度考えていただきたいのです。
その部屋は、今のお客様から選ばれる状態になっていますか?
古くなったエアコンを、そのままにしていませんか?
TVモニターホンがないままになっていませんか?
室内の印象が暗くなっていませんか?
設備や家賃が、競合物件に見劣りしていませんか?
こうしたことを見直すだけでも、改善の余地が見つかるかもしれません。
私は、空室対策とは、仲介会社に広告料をたくさん支払うことではなく、お客様が住みたいと思う部屋をつくることだと考えています。
最後に、全国の賃貸オーナーの皆さんへ。
「ADを3ヶ月出しますから決めてください!」
そうお願いする前に、ぜひ一度、空室になっているご自身の物件を見てください。
そして、その部屋に自分が住みたいと思えるか、考えてみてください。
ADというニンジンを営業マンにぶら下げる前に、そのお金で物件をバリューアップしませんか?
決めるのは営業マンではありません。
その部屋を選ぶ、お客様なのです!

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