ペット不可物件をペット可へ変更できる?空室対策で失敗しないための注意点と正しい手順

空室がなかなか決まらない。

退去が続いて、空室が増えてきた。

賃貸オーナー様であれば、一度はこんな悩みを持ったことがあるのではないでしょうか?

そんなとき、よく相談されるのが、

「空室が増えてきたので、ペット可にしようと思うんだけど……」

というお話です。

確かに、ペット可物件は、ペットを飼いたい方にとって魅力的な選択肢です。

しかし、私は、空室が増えたからという理由だけで、安易にペット可へ変更することには賛成しません。

なぜなら、「ペット可物件」と「ペット共生型物件」は、まったく別物だからです。

さらに、既存入居者とのトラブルや、入居審査、原状回復など、注意すべきことがたくさんあります。

今回は、当社で実際に経験してきた事例を交えながら、ペット不可物件をペット可に変更する際の考え方についてお話しします。

目次

「ペット可」と「ペット共生型」は、まったく違う!

まず、オーナー様に理解していただきたいことがあります。

それは、

「ペット可物件」と「ペット共生型物件」は、同じではない!

ということです。

ペット可物件とは、基本的にはペットの飼育が認められている物件のことです。

一方、ペット共生型物件は、最初から人とペットが一緒に暮らすことを想定して設計された物件です。

例えば、

  • ペットによる傷や汚れに配慮した床材
  • 消臭や清掃のしやすさを考えた内装材
  • ペット用のトイレスペース
  • ペットが行き来できる専用の扉
  • 足洗い場などの共用設備

こうした工夫が施されています。

つまり、単に「ペットを飼ってもいいですよ」という物件ではなく、**「ペットと快適に暮らすためにつくられた物件」**なのです。

ここが大きな違いです。

ペット共生型なら、家賃が高くても決まる?

当社でも、ペット共生型物件を管理しています。

こうした物件は、一般的な賃貸住宅と比べて、家賃を高く設定できる場合があります。

当社の経験では、周辺の一般物件より1万円~2万円程度高い賃料でも、入居が決まるケースがあります。

もちろん、これはすべての物件に当てはまる話ではありません。

立地、間取り、設備、周辺の競合状況によって変わります。

しかし、ペットと快適に暮らすことを重視している方にとっては、その設備に価値があるのです。

大切な愛犬や愛猫と、快適に暮らしたい。

そのためなら、多少家賃が高くても構わない。

そう考える方もいらっしゃいます。

一方、古いアパートを、何の設備改善もせずに、

「今日からペット可にします!」

と変更しただけでは、同じような家賃設定は難しいでしょう。

「ペット可」という条件だけで、物件の価値が大きく上がるわけではないのです。

空室が増えたからペット可!その考え方は危険です

私が特に注意していただきたいのは、空室が増えたために、苦し紛れにペット可へ変更するケースです。

もちろん、ペット可への変更が成功する物件もあります。

当社でも、途中からペット可に変更した物件はたくさんあります。

しかし、何の準備もせず、単に募集条件を変更するだけでは、期待した効果が得られないこともあります。

例えば、ペット可に変更したのに、室内の床や壁は傷みやすいまま。

防音性能も十分ではない。

既存入居者への説明もしていない。

入居審査の基準も決めていない。

これでは、空室が埋まったとしても、その後にトラブルが発生する可能性があります。

空室対策のつもりが、管理トラブルを増やしてしまった。

そんなことになっては、意味がありません。

「犬はOK、猫はNG」が多い理由

ペット可への変更を相談される際、オーナー様からよく言われるのが、

「犬はいいけど、猫はダメにしてほしい」

というご希望です。

理由を聞くと、

「猫は臭いがきつい」

「爪とぎで壁や床がボロボロになる」

「猫の臭いはなかなか取れない」

といった意見が多いです。

確かに、猫の尿による臭いや、爪とぎによる損傷は、賃貸管理の現場でも問題になることがあります。

しかし、私は少し違った考え方をしています。

これは、犬が好きとか猫が好きとか、そういう話ではありません。

長年、賃貸管理の現場で経験してきたことからの考え方です。

私は、むしろ犬の方が難しいと思うことがあります

犬を飼育する場合、私が特に気にするのは、

「吠える」という問題です。

これは、集合住宅では大きな問題になることがあります。

特に、もともとペット不可だった物件を途中からペット可にする場合には注意が必要です。

既存入居者の方は、ペットがいない環境を前提に入居されているからです。

犬の飼い主さんから、

「うちの子は、ちゃんとしつけていますから!」

「無駄吠えなんてしませんよ!」

と言われることがあります。

もちろん、しつけがしっかりできている犬もたくさんいます。

しかし、飼い主さんが仕事に出かけた後、寂しさから吠えてしまう犬もいます。

飼い主さんが帰宅すると、安心して静かになる。

つまり、飼い主さん自身が、留守中に犬が吠えていることを知らない場合があるのです。

また、犬によっては、建具や設備を噛んで傷つけてしまうこともあります。

一方、猫は犬のように吠えることはありません。

もちろん、猫にも鳴き声や臭い、爪とぎなどの問題はあります。

しかし、飼育環境が整っていれば、トラブルを抑えられるケースもあります。

私は、犬だから安心、猫だから危険という単純な判断はしていません。

大切なのは、動物の種類よりも、飼い主さんの飼育方法なのです。

犬も猫も、結局は飼い主次第!

長年、賃貸管理をしてきて、私が強く感じていることがあります。

それは、

「ペットのトラブルは、飼い主さんの飼育管理に大きく左右される」

ということです。

例えば、ペットを飼っているにもかかわらず、十分な世話をせずに何日も家を空けてしまう。

トイレを掃除しない。

適切な運動や遊びの時間を確保しない。

ペットの体調やストレスに無関心。

こうした飼育方法では、ペットもかわいそうです。

そして、その結果として、室内の汚損や設備の損傷につながることがあります。

猫の場合、トイレが汚れたままになっていると、別の場所で排泄してしまうことがあります。

それが床材などに染み込めば、臭いが残る原因にもなります。

また、適切な爪とぎ器やキャットタワーを設置し、猫が快適に暮らせる環境を整えることで、壁や建具への損傷を減らせる場合があります。

ただし、猫の習性には個体差があり、設備を整えれば必ず傷を防げるわけではありません。

犬も猫も、生き物です。

ペットが悪いのではなく、飼い主さんが適切に世話をしていないことが問題になる場合があるのです。

夜逃げした部屋に、白骨化した動物の遺体が……

これは、今でも忘れられない出来事です。

以前、他の管理会社から管理を引き継いだ物件がありました。

その物件には、長期間、誰も入っていない部屋がありました。

いわゆる「開かずの間」です。

前の管理会社に事情を聞くと、

「半年以上前に入居者が夜逃げして、そのままになっています」

とのこと。

残置物もそのまま。

適切な処理が進められていない状態でした。

そこで、当社で状況を確認し、必要な対応を進めることになりました。

そして、適切な手続きを経て室内を確認したところ……。

白骨化した動物の遺体があったのです。

本当に、言葉がありませんでした。

飼い主に置き去りにされ、命を落としてしまった動物。

一体、どんな思いで最後を迎えたのでしょうか。

私は、こういう話を聞くと、本当に腹が立ちます。

ペットは、物ではありません。命です。

飼うのであれば、最後まで責任を持ってほしい。

これは、賃貸経営以前の問題だと思っています。

猫3匹を飼っていたのに、退去後の部屋が驚くほどきれい!

一方で、まったく逆の経験もあります。

以前、当社の管理物件に、猫を3匹飼育している女性の入居者がいらっしゃいました。

職業はお医者さんでした。

あるとき、水漏れ修理のために室内へ入らせていただいたことがあります。

すると、猫たちが快適に暮らせるよう、さまざまなグッズや設備が設置されていました。

猫のためのスペース。

爪とぎ。

遊ぶための設備。

室内もきれいに管理されていました。

そして、後日、その方が退去されたときのことです。

室内を確認して、驚きました。

「本当に、猫を3匹飼っていたんですか?」

そう聞きたくなるくらい、臭いもほとんどなく、目立った損傷もない状態だったのです。

もちろん、飼い主さんの職業や収入だけで、飼育の良し悪しが決まるわけではありません。

しかし、この方は、猫たちの生活環境をしっかり整え、室内の管理も丁寧にされていたのだと思います。

同じ猫3匹でも、飼い方によって退去時の状態は大きく変わるのです。

だから私は、犬か猫かだけで判断するのではなく、飼い主さんの飼育に対する姿勢を重視したいのです。

ペット可物件では、入居審査が特に重要!

私は、ペット可物件では、通常の賃貸住宅以上に入居審査を重視しています。

なぜなら、ペットを飼育する場合、家賃の支払いだけでなく、動物の飼育や室内の管理についても、継続的な責任が必要になるからです。

当社では、物件や申込内容に応じて、クレジット系の家賃保証会社を利用することもあります。

ただし、ここで一つ注意していただきたいことがあります。

「クレジット系の保証会社に通れば、良い飼い主である」とは限りません。

また、審査に通らなかったからといって、ペットの飼い方が悪いと決めつけることもできません。

保証会社の審査基準は会社によって異なり、その内容がすべて公開されているわけでもありません。

それでも、家賃の支払い能力を適切に確認することは、賃貸経営上の重要なリスク管理です。

当社でも、保証会社を変更して入居していただいた方が、その後、家賃滞納を繰り返した経験があります。

私自身、そうした経験から、審査基準を安易に緩めることには慎重です。

ただし、過去の当社の経験だけで、すべての入居希望者に同じ結果が起きると断定することはできません。

重要なのは、保証会社の審査だけに頼るのではなく、契約内容や飼育ルールを丁寧に確認することです。

超要注意!既存入居者のペットアレルギー問題

さて、ここからが今回の記事で最も重要な部分です。

ペット不可物件をペット可へ変更する場合、絶対に軽視してはいけない問題があります。

それは、

「既存入居者への影響」です。

特に注意したいのが、ペットアレルギーです。

例えば、猫アレルギーのある方が、

「この物件はペット不可だから安心だ」

と思って入居されていたとします。

ところが、ある日突然、オーナー様が、

「来月からペット可にします!」

と変更したらどうでしょうか。

その後、共用部分などを通じてアレルゲンに接触し、体調に影響が出る可能性もあります。

もちろん、ペット可へ変更しただけで、必ず健康被害が発生するわけではありません。

また、健康被害が発生したからといって、必ず貸主に損害賠償責任が生じるとも限りません。

しかし、既存入居者の健康状態や契約条件を無視して変更すれば、トラブルにつながる可能性があります。

私は以前、ペット可への変更後にアレルギーの問題が生じ、損害賠償請求に発展したという話を聞いたことがあります。

個別の事実関係や法的な結論までは確認できていませんが、管理会社として十分に注意すべき問題だと思っています。

空室を埋めるために、今住んでいる入居者の生活を犠牲にしてはいけないのです。

「ペット不可だから入居した!」という人もいます

もう一つ、忘れてはいけないことがあります。

世の中には、ペットが苦手な方もいらっしゃいます。

犬の鳴き声が苦手。

猫が怖い。

動物の臭いが気になる。

こうした理由から、あえてペット不可物件を選んでいる方もいます。

そのような入居者から、

「契約書にはペット不可と書いてあるじゃないですか!」

「私はペットが嫌いだから、この物件を選んだんです!」

「勝手にペット可にするなら、引っ越し費用を負担してください!」

と言われたら、どうでしょうか。

実際、私は、こうした主張があったという話を聞いたことがあります。

もちろん、ペット可へ変更したことだけで、直ちに契約違反や損害賠償義務が成立するとは限りません。

契約書の内容や変更の経緯、入居者への影響などによって判断は変わります。

しかし、少なくとも、何の説明もなく一方的に変更することは避けるべきです。

既存入居者は、ペット不可という条件を前提に契約している可能性があるのです。

ペット可へ変更するなら、正しい手順を踏みましょう!

では、ペット不可物件をペット可へ変更することはできないのでしょうか?

いいえ、そんなことはありません。

当社でも、途中からペット可に変更した物件はたくさんあります。

ちなみに、当社の管理物件の約15%はペット可物件です。

新築時からペット共生型として設計された物件もありますが、途中からペット可に変更した物件も少なくありません。

そして、当社が把握している範囲では、こうした変更そのものを原因とする大きなトラブルには至っていません。

それは、変更前に必要な確認や調整を行っているからだと考えています。

私がおすすめする基本的な流れは、次のとおりです。

① 既存入居者の状況を確認する

まずは、現在住んでいる方々への影響を確認します。

ペットアレルギーなど、健康上の問題はないか。

ペット不可であることを重視して入居された方はいないか。

契約書や入居時の説明内容はどうなっているか。

こうしたことを確認する必要があります。

② 既存入居者へ説明し、必要な調整を行う

ペット可へ変更する理由や、今後の飼育ルールについて説明します。

既存の契約条件や入居者の権利に関わる場合には、必要に応じて同意を得るなど、慎重な対応が必要です。

単に通知を出せば必ず変更できる、というものではありません。

③ 飼育できるペットの条件を決める

犬も猫も認めるのか。

犬は小型犬までにするのか。

飼育できる頭数は何匹までか。

共用部分ではどのように移動させるのか。

鳴き声や臭い、排泄物の処理について、どのようなルールを設けるのか。

こうした条件を事前に明確にしておきます。

④ 契約書とペット飼育細則を整備する

ペット飼育に関する特約や細則を作成します。

飼育可能な動物の種類や頭数。

無断飼育の禁止。

共用部分でのルール。

騒音や臭いへの対応。

原状回復の負担範囲。

こうした内容を、分かりやすく定めておくことが重要です。

なお、原状回復費用については、何でも入居者に負担させられるわけではありません。

通常損耗との区別や、特約の有効性などにも注意が必要です。

⑤ 必要に応じて設備改善を行う

単にペット可にするだけでなく、物件の状態に応じて設備改善も検討します。

傷に配慮した床材。

清掃しやすい壁材。

臭い対策。

防音対策。

こうした工夫によって、入居後のトラブルを軽減できる可能性があります。

⑥ 入居審査と飼育状況の確認を徹底する

最後に、入居審査です。

家賃の支払い能力だけでなく、飼育する動物の種類や頭数、飼育環境についても確認します。

必要に応じて、ペットの登録情報や予防接種など、物件のルールに関係する事項を確認することも考えられます。

ただし、必要以上の個人情報を収集しないよう、適切に運用することが重要です。

まとめ|ペット可にすることが空室対策ではない!

空室が増えてきた。

なかなか入居者が決まらない。

だから、ペット可にする。

その考え方自体を、私は否定しません。

実際、ペット可への変更が効果的な空室対策になるケースもあります。

しかし、「ペット可にすれば決まるだろう!」という安易な考え方は危険です。

ペット可物件とペット共生型物件は違います。

犬にも猫にも、それぞれ注意すべき点があります。

入居者の飼育方法によって、室内の状態やトラブルの発生状況も変わります。

そして、何より大切なのは、既存入居者への配慮です。

ペット不可という条件を前提に住んでいる方々を無視して、勝手にペット可へ変更する。

そんなことをすれば、空室対策どころか、別の問題を抱えることになりかねません。

私は、ペット可への変更は、単なる募集条件の変更ではないと思っています。

「その建物を、ペットと人が安心して暮らせる物件へ変えていく」という経営判断なのです。

だからこそ、正しい手順を踏む必要があります。

最後に、全国の賃貸オーナーの皆さんへ。

「空室が増えたから、ペット可にしよう!」

そう思ったら、まずは管理会社に相談してください。

そして、ペット可にすることが本当にその物件に合った空室対策なのか、一緒に考えてみてください。

ペット可にするだけでは、物件の価値は上がりません。

ペットと人が快適に暮らせる環境をつくってこそ、本当のバリューアップなのです!

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