先日、賃貸スタッフと一緒に、物件を見に行ってきました。
案内するときの説明の仕方、お客様に伝えるポイント、設備の詳細などを確認する現地研修です。
訪れたのは、富山市内にある、某ハウスメーカーが建てた新築物件。
物件名は「9colors(ナインカラーズ)」。
おしゃれな名前です。
建物は3階建ての9世帯。入口には、物件名を思わせるカラフルなタイルを使ったモニュメントが設置されていました。
「なるほど、9世帯でナインカラーズ。こだわっていますね!」
ところが、見ているうちに、ある違和感が……。
ナインカラーズなのに、なぜ7個?
入口のモニュメントには、カラフルなタイルが9個。

そして、玄関まで続く通路の土間にも、カラフルなタイルが埋め込まれています。
ところが、私が見た土間の通路のタイルは、なぜか7個。
……7個?
ナインカラーズなのに?
入口のモニュメントは9個なのに?
「なぜ、ここで7個にしたんだー!」
もちろん、設計した方には、何か意図があったのかもしれません。私は設計意図まで確認したわけではありません。
ただ、物件名と入口のモニュメントを見て、「9」という数字で統一しているのだと思った私には、そこだけ中途半端に感じられました。
せっかく名前とモニュメントで世界観をつくっているのに、なぜ通路まで貫かなかったのか。
「そこまでやるなら、最後までこだわってほしかった!」
というのが、私の率直な感想です。
究極にしびれた、12世帯のアパート
こだわりという話で思い出すのが、私の不動産人生の中でも、特に印象に残っている物件です。
金沢にあった、12世帯のアパート。
名前は、記憶では「星座の森」。
もしかすると、前に別の言葉が付いていたかもしれません。正式名称については、記憶があいまいです。
ただ、その物件の部屋の呼び方は、今でも覚えています。
普通なら、101号室、102号室、201号室ですよね。
ところが、その物件は違いました。
牡羊座、牡牛座……と、部屋に12星座の名前が付いていたのです。
12世帯だから、12星座。
物件名だけで終わらず、それぞれの部屋にまでコンセプトがつながっている。
「そこまでやるか!」
これは、しびれました。
実際に入居率や家賃へどのような効果があったかは分かりません。
それでも、私が今も覚えているほど、印象に残る物件だったことは確かです。
「こだわりが一つあると、入居率が1%落ちる」説
以前、ドラマ「正直不動産」のモデルにもなった鈴木誠さんと一緒に食事をした際、こんな話題になりました。
「物件にオーナーのこだわりが一つあると、入居率が1%落ちる説」
※これは統計データに基づく数値ではなく、食事の席で出た、現場感覚を表す話です。
この話に、当社の賃貸スタッフも、
「たしかに!」
「分かる!」
と賛同していました。
もちろん、こだわりのある物件は全部ダメだ、という意味ではありません。
ただ、賃貸の現場にいると、心当たりはあります。
オーナーさんが、良かれと思って飾った絵画。
入口に置かれた、独特なモニュメント。
本人には強い思い入れがあっても、初めて見た人には、その良さが伝わらない。
場合によっては、
「これは、ない方がよかったのでは……」
と感じてしまうこともあります。
オーナーが気に入っていることと、入居者が気に入ることは、別なのです。
その物件名、誰のために付けましたか?
物件名にも、オーナーさんのこだわりが表れます。
お孫さんの名前を付ける。
家族にちなんだ名前を付ける。
それ自体を否定するつもりはありません。
響きが良く、物件にも合っていれば、素敵な名前になると思います。
ただ、私がこれまでに聞いた中で、特に驚いたのは、昔付き合っていた彼女の名前を入れたという物件です。
いや、それは……。
奥さんには、何と説明するのでしょうか(笑)。
もっとも、名前の由来を知らない入居者には、普通のおしゃれな名前に聞こえるかもしれません。
だから、由来だけで良し悪しが決まるわけでもありません。
私が考えてほしいのは、オーナー個人の思い入れに加えて、そこに住む人の視点があるかどうかです。
読みやすいか。
覚えやすいか。
人に伝えやすいか。
自分の住所として書くときに、違和感がないか。
オーナーにとって大切な名前でも、毎日の暮らしの中で使うのは入居者です。
私なら、部屋にも色の名前を付けたくなる
話を「9colors」に戻します。
9世帯で、ナインカラーズ。
入口のモニュメントには、9個のカラフルなタイル。
そこまで考えたのであれば、私なら、部屋にも色の名前を付けたくなります。
例えば、
「Red」
「Blue」
といった具合です。
正式な部屋番号とは別に、各部屋の愛称やサインとして色を使う方法も考えられます。
玄関まわりにも、その部屋の色をさりげなく取り入れる。
そうすれば、物件名、入口、通路、各部屋まで、一つのテーマでつながります。
案内するスタッフも、
「こちらは、9つの部屋をそれぞれの色で表現した物件です」
と説明できます。
もちろん、これは私の勝手なアイデアです。実際に採用するなら、部屋の識別や郵便・配送などで混乱しない工夫も必要でしょう。
それでも、せっかくの「9colors」という名前を、もっと生かせたのではないか。
そんなことを考えながら、物件を見ていました。
こだわるなら、入居者に伝わるところまで
私は、個性のある物件が好きです。
「よく考えたな!」
「そこまでやったか!」
と思える物件に出会うと、案内する側としても楽しくなります。
ただし、こだわるのであれば、最後まで筋を通してほしい。
そして、そのこだわりが、入居者にとってどんな魅力になるのかまで考えてほしいのです。
この記事でいう「物件の価値を下げる」とは、タイルの数によって査定価格が下がるという話ではありません。
せっかくつくった物件の魅力や印象を、中途半端な演出や伝わらないこだわりで損なってしまうのは、もったいないということです。
オーナーの思い入れが、入居者にも伝わる魅力になっているか。
一つひとつの工夫が、物件全体のコンセプトにつながっているか。
設計図だけでなく、実際に訪れる人、案内する人、住む人の目線で見てみてください。
こだわるなら、徹底的に。
金沢で出会った12星座の物件を思い出しながら、ナインカラーズの通路で、ついタイルを数えてしまった私でした(笑)。

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