オーナーさんから、管理移管について相談を受けました。
対象となったのは、富山県内でも客付けに苦戦するエリアにある賃貸物件です。
正直に言えば、お世辞にも、
「この物件なら買っても大丈夫です」
とは言えない物件でした。
オーナーさんに、
「購入する前に、管理会社へ相談しなかったのですか?」
と尋ねたところ、管理会社から、
「確かに苦戦するエリアではありますが、大丈夫でしょう」
と言われ、その言葉を信じて購入したそうです。
ところが、購入後の状況は厳しいものでした。
オーナーさんから伺ったところ、前管理会社が2年半の間に客付けした件数は、なんと0件。
入居率は50%を下回り、具体的な改善提案もないまま、物件は事実上放置されていました。
「このままでは本当にまずい」
そう考えたオーナーさんが、管理移管を含めて当社へ相談に来られたのです。
社内からも「本当に管理を受けるのですか?」という声
最初に物件の状況を確認した際、当社のスタッフからも、
「この物件の管理を受託して、本当に大丈夫ですか?」
という声が上がりました。
それほど客付けが難しいエリアだったのです。
もちろん、私にも劇的に入居率を改善できる特効薬があったわけではありません。
私は最初に、オーナーさんへ正直に伝えました。
「短期間で劇的に入居率が上がるとは期待しないでください」
「時間をかけて、一つずつ問題を解決していく必要があります」
それでもオーナーさんは、私が大切にしている、
「管理会社はオーナーの共同経営者である」
「オーナーと二人三脚で賃貸経営を立て直す」
という考え方を理解してくださいました。
そこで当社は、厳しい状況を承知したうえで管理を受託しました。
前管理会社の担当者は1年以上物件を見ていなかった
管理移管にあたり、現地で前管理会社の担当者と打ち合わせを行いました。
そこで最初に驚いたのが、担当者自身が1年以上、この物件へ足を運んでいなかったことです。
現地には、前オーナーが残したと思われる物品も長期間放置されていました。
さらに大きな問題は、数多くの空室があるにもかかわらず、すぐに入居者を募集できる状態の部屋が1室もなかったことです。
ただでさえ客付けが難しいエリアです。
そのうえ、入居希望者へ紹介できる部屋すら用意されていない。
これでは決まるはずがありません。
何もしなければ、現在の入居者が退去するたびに入居率は下がっていきます。
前管理会社も、事実上「打つ手がない」と諦めていたのだと思います。
最初に行ったのは「募集」ではない
当社が管理移管後、最初に行ったのは、ポータルサイトへの掲載でも家賃の値下げでもありません。
まず、2部屋をすぐに貸し出せる状態にしました。
空室が何十室あったとしても、紹介できる部屋がなければ客付けはできません。
募集条件を考える前に、入居希望者へ実際に見せられ、契約後に入居できる部屋をつくる。
当たり前の話ですが、この物件では、その当たり前のことから始める必要がありました。
最大の問題は電気温水器だった
この物件における最大の問題は、給湯設備でした。
すべての部屋で電気温水器を使用していましたが、能登半島地震の影響で倒れたり漏水したりして、使用できないものが数多く残っていました。
電気温水器を交換する場合、当時の見積もりでは1台当たり約40万円。
台数が多いため、すべてを交換すればオーナーさんに大きな費用負担が発生します。
そこで私は、電気温水器からガス給湯器への切り替えを提案しました。
ところが、オーナーさんによると、前管理会社にも同じ相談をしたものの、ガス会社から断られていたそうです。
そこで当社が日頃から付き合いのあるガス会社へ相談しました。
物件の状況や今後の管理方針を説明し、条件を調整した結果、一定の条件付きではありましたが、ガス給湯器への切り替えについて了承を得ることができました。
これによって、客付けを進めるうえで大きな障害となっていた給湯設備の問題を解決できました。
その後も、残置物、室内の修繕、募集条件など、細かな問題を一つずつ整理していきました。
管理移管から4か月で8部屋の客付けに成功
その結果、前管理会社では2年半にわたり客付けがなかったとされる物件で、当社への管理移管からわずか4か月で8部屋の客付けに成功しました。
特別な裏技を使ったわけではありません。
成功した理由は、次のことを順番に実行したからです。
- 管理会社が実際に現地を確認する
- 物件が決まらない原因を洗い出す
- すぐに貸せる部屋を確保する
- 客付けを妨げている設備上の問題を解決する
- 協力会社と条件を交渉する
- オーナーと相談しながら、できることから進める
- 募集後も改善を止めない
これだけです。
しかし、物件へ足を運ばず、問題を放置していれば、この当たり前のことすら実行できません。
「客付けできない物件」ではなく「客付けできる状態になっていなかった」
この物件は、確かに難しいエリアにあります。
今後も、簡単に満室になるとは考えていません。
それでも、2年半にわたって客付けが0件だった原因を、すべてエリアのせいにしてよいのでしょうか。
実際には「客付けできない物件」だったのではなく、そもそも「客付けできる状態になっていなかった」のです。
空室対策というと、すぐに家賃を下げたり、広告料を増やしたり、高額なリフォームを行ったりする管理会社があります。
しかし、その前に確認すべきことがあります。
- 現地へ足を運んでいるか
- 入居希望者に紹介できる部屋があるか
- 生活に必要な設備が使用できるか
- 決まらない本当の原因を把握しているか
- オーナーへ具体的な改善提案をしているか
賃貸経営の立て直しに、魔法のような方法はありません。
現場を見て、問題を見つけ、優先順位を決め、一つずつ解決する。
結局、これが一番確実な方法です。
管理会社は、家賃を集金して報告書を送るだけの会社ではありません。
オーナーの共同経営者として、苦しい物件ほど現場に入り、一緒に経営を立て直す。
それが、本来の賃貸管理だと私は考えています。

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