よく、飛び込みで来店された方から、このようなことを言われます。
「私、これだけ資産を持っています」
「属性もいいです」
「銀行から〇億円まで融資できると言われています」
「だから、いい物件があったら紹介してください」
いやいや、ちょっと待ってください。
するわけないだろう!
……と言いたくなることがあります。
もちろん、実際の接客でそんな言い方はしません。
しかし、資産内容や融資枠を見せれば、不動産会社がすぐに優良物件を紹介してくれると思っているのであれば、それは少し違います。
そもそも、あなたが言う「いい物件」とは、どのような物件なのでしょうか。
「いい物件」の定義は人によって違う
一口に「いい物件」と言っても、その定義は人によって異なります。
例えば、
- 表面利回りが高い
- 築年数が浅い
- 駅や商業施設に近い
- 土地の価値が高い
- 満室で稼働している
- 修繕履歴が明確である
- 今後も安定した需要が見込める
- 融資を受けやすい
- 出口戦略を描きやすい
- 管理や客付けがしやすい
など、評価の基準はいくつもあります。
高利回りでも、大規模修繕が必要な物件かもしれません。
満室でも、現在の家賃が相場より高く、退去後に大幅な値下げが必要になるかもしれません。
築浅でも、供給過多のエリアに建っている可能性があります。
したがって、「誰にとっても絶対にいい物件」というものは、簡単には定義できません。
それでも、
「価格が妥当で、長期的な賃貸需要があり、大きな問題もなく、安定した収益を期待できる」
という物件であれば、多くの人が欲しいと思うでしょう。
問題は、そうした物件が簡単に市場へ出てくるのかということです。
本当に良い物件は、市場に出回りにくい
これは統計的な結論ではなく、私が長年、不動産の現場に携わってきた経験から感じていることです。
本当に良い物件は、一般市場に出回りにくい。
売却の相談を受けた不動産会社は、物件の内容を最初に確認できる立場にあります。
価格、立地、入居状況、修繕履歴、所有者の事情など、一般公開される前の情報に触れられます。
その物件が誰でも欲しがるような条件であれば、まず不動産会社自身が購入を検討することがあります。
さらに問題なのは、売買担当者が個人で真っ先に購入するケースです。
もちろん、不動産会社やその従業員が収益物件を購入すること自体を、すべて否定するつもりはありません。
必要な説明と適正な手続きを行い、売主の利益を損なわない取引であれば、一律に問題だとはいえないからです。
しかし、顧客へ紹介する前に、立場を利用して担当者自身が最も条件の良い物件を取得するのであれば、顧客との利益相反を疑われても仕方ありません。
友人に自分の彼女を紹介しますか
少し乱暴な例えですが、友人から、
「いい女性がいたら紹介してよ」
と言われたとします。
そのとき、自分が本気で好きな女性や、現在付き合っている彼女を友人に紹介する人はいませんよね。
自分が最も欲しいものを、わざわざ他人へ渡す人は多くありません。
不動産も同じです。
条件のよい物件を最初に見つけ、その価値を正確に判断できる人が、自分で買える状況にある。
それでも、その物件を会ったばかりの投資家へ紹介するでしょうか。
最も良いものは、自分たちで確保する。
残念ながら、そのような考え方が存在するのが、不動産業界の現実だと私は感じています。
一般市場に出るのは「2番手物件」
不動産会社も担当者も買わず、既存の顧客にも紹介されず、一般の市場へ出てくる。
その物件は、悪い物件とは限りません。
価格や運営方法によっては、十分に利益を出せる可能性があります。
ただし、多くの場合は、
プロが真っ先に飛びつくほどの物件ではなかった
ということです。
言い換えれば、一般市場で購入できる物件の多くは、何らかの判断や工夫が必要な「2番手物件」です。
例えば、
- 現在の価格では利回りが合わない
- 空室が多い
- 大規模修繕が必要
- 建物や権利関係に確認事項がある
- 融資が付きにくい
- 客付けに工夫が必要
- 売主の希望価格が高い
- 出口戦略を描きにくい
といった課題があるかもしれません。
しかし、2番手物件だから買ってはいけないわけではありません。
その問題を正確に把握し、自分の経験や資金、運営能力によって改善できるのであれば、その人にとっては優良物件になります。
待っているだけで誰かから最高の物件を渡してもらうのではなく、自分の力で価値をつくるという考え方が必要です。
優れた投資家は、自分で物件をつくる
富山には、有名な不動産投資家が何人もいます。
そのような方々を見ていると、不動産会社から紹介される物件を、ただ待っているだけではありません。
自分で土地を探し、建築会社と打ち合わせを行い、新築物件をつくります。
なかには、一般の投資家なら避けるような訳あり物件や、交渉が難しい物件を自分で見つけ、問題を整理し、直接交渉して購入する強者もいます。
このようなケースであれば、
「自分で良い物件を見つけた」
と言ってよいでしょう。
最初から完成した優良物件が目の前に現れたのではありません。
土地を見つける。
情報を調べる。
需要を判断する。
条件を交渉する。
問題を解決する。
建物を企画する。
その結果として、自分にとっての良い物件をつくり上げています。
本当に優れた投資家は、誰かが持ってくる情報を待つだけではなく、自分で動いて物件の価値を見つけています。
私が収益物件を個人で所有しない理由
ちなみに、私は個人で収益用不動産を所有していません。
理由は簡単です。
お客様を裏切りたくないからです。
私は不動産会社の経営者であり、収益物件の情報が一般のお客様より先に入ってくる立場です。
その私が積極的に収益物件を購入するようになれば、本当に良い物件が出てきたとき、どうなるでしょうか。
自分が買いたい物件は自分で買う。
自分が買わなかった物件だけをお客様へ紹介する。
それでは、お客様へ紹介する物件は、
「自分はいらないと判断した物件」
ばかりになってしまいます。
少なくとも、私はそのような仕事をしたくありません。
もちろん、収益物件を所有している不動産会社の経営者や営業担当者を、すべて否定しているわけではありません。
自ら物件を所有することで、オーナーの立場や賃貸経営の苦労を理解できるという考え方もあります。
これは、あくまでも私自身のポリシーです。
私は、お客様へ紹介する立場と、自分で購入する立場を分けたいと考えています。
当社が年間数件しか仲介しない理由
当社が1年間に仲介する収益用不動産は、数件程度です。
売買仲介を積極的に行えば、仲介手数料を増やすことはできるでしょう。
しかし、当社は収益物件であれば何でも紹介するという方針ではありません。
購入後の賃貸経営まで考え、当社が管理を引き受けたいと思える物件でなければ、積極的に紹介しません。
良いと思える収益物件が、年間に何十件も出てくるわけではないからです。
そして、本当に良いと判断した物件が出た場合は、当然、日頃からお付き合いのある当社のVIPオーナーへ優先的にお伝えします。
その結果、一般市場へ公開される前に話が進むことがあります。
つまり、優良物件は市場に出る前に決まることがあるのです。
ネットに掲載されている物件の意味
当社がインターネットに掲載している収益物件についても、すぐに売れると考えているものばかりではありません。
オーナー様から売却相談を受け、価格や条件について説明したうえで、
「この条件では、成約まで時間がかかる可能性があります」
と了承を得て掲載している物件もあります。
ネットに掲載されているから悪い物件という意味ではありません。
また、ネット掲載前に決まる物件が、必ず優良物件だとも限りません。
しかし、誰もが欲しがる価格と条件がそろった物件ほど、公開前に既存顧客へ情報が伝わりやすいのは事実です。
ポータルサイトを毎日見ていれば、いつか極上物件が見つかる。
そのような期待だけで待ち続けても、情報競争の最前列には立てません。
資産があるだけでは、優先顧客にならない
資産がある。
属性がよい。
金融機関から融資の内諾を得ている。
これらは、収益物件を購入するうえで大きな強みです。
しかし、それだけで不動産会社の優先顧客になれるとは限りません。
不動産会社から見れば、初めて来店した人については分からないことばかりです。
本当に購入するのか。
条件が変わっても判断できるのか。
必要な資料を速やかに提出できるのか。
売主の事情を理解できるのか。
購入後に、きちんと物件を経営できるのか。
管理をどこへ任せるのか。
融資枠があることと、信頼できる取引相手であることは別です。
良い情報が欲しければ、信頼関係をつくる
良い物件が欲しいのであれば、不動産会社と継続的な信頼関係をつくる必要があります。
一度来店して資産表を見せ、
「良い物件が出たら電話してください」
と伝えるだけでは、親密な関係にはなりません。
少なくとも当社では、購入後の賃貸経営まで一緒に取り組めるかを重視します。
そのために最も分かりやすいのが、管理を任せていただくことです。
管理を通じて継続的に付き合えば、そのオーナーの考え方が分かります。
連絡への対応。
修繕に対する判断。
入居率への考え方。
資金計画。
入居者や取引先への姿勢。
長期的な賃貸経営を一緒に行える相手かどうかが見えてきます。
不動産会社側も、そのオーナーがどのような物件を求め、どの程度のリスクを取れるのかを理解できます。
だから、条件の合う物件が出たときに、具体的な顔が思い浮かぶのです。
「管理は別会社、情報だけください」は通用しない
ときどき、このような方がいます。
「物件を購入したいので、良い情報をください」
「ただし、購入後の管理は別の会社へ任せます」
当社の立場からすれば、その方へ優先的に情報を提供する理由はありません。
当社は、物件を売って仲介手数料を受け取れば終わり、という考えではないからです。
購入後の入居募集や修繕、家賃設定、入居者対応まで関わり、オーナーと一緒に賃貸経営を続けることを前提にしています。
もちろん、管理会社を選ぶのはオーナーの自由です。
管理を任せない相手に物件情報を提供してはいけないという決まりもありません。
しかし、誰へ優先的に情報を伝えるかを判断するとき、日頃から管理を任せていただき、長期的な関係を築いているオーナーを優先するのは当然です。
「管理は別会社へ任せる。でも、良い物件の情報だけは自分にください」
そんな都合のよい話が、通用すると思わないでください。
良い物件は、待っているだけでは手に入らない
本当に良い物件が欲しければ、方法は二つです。
一つは、自分で探し、自分で価値を見つけること。
土地から探して新築する。
問題のある物件を調査し、交渉して購入する。
空室物件を再生する。
ほかの人が避ける課題を解決し、自分で優良物件へ変える方法です。
もう一つは、不動産会社や管理会社と長期的な信頼関係をつくること。
購入して終わりではなく、管理まで任せ、二人三脚で賃貸経営を続ける。
取引を重ね、約束を守り、お互いの考え方を理解する。
その積み重ねによって、良い情報が出たときに思い出してもらえるオーナーになることです。
資産を見せるだけでは足りません。
融資枠を自慢するだけでも足りません。
良い物件が欲しいのであれば、まず自分自身が、
「この人に紹介したい」
と思われるオーナーになってください。
情報だけ欲しい。
管理は別の会社へ任せる。
でも、良い物件が出たら自分を最優先にしてほしい。
そんなお願いをされても、私の答えは決まっています。
するわけないだろう!

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